アップスキー体験記

文:榎本有希子

 

平成14年のゴールデンウイーク後半,アップスキーインストラクターの野坂氏とそのご家族が主催する3泊4日の月山スキーツアーに家族(主人と娘と私)3人で参加させていただきました。

五色沼からの月山

4日間の月山は天候が目まぐるしく変化して,夏のように暑くてTシャツ1枚で滑れる日があったかと思うと,数メートル先が見えないほどガスって寒い日もあり,ウエアの調節が毎日大変でした。通年ではGWにスキーが楽しめる蔵王でも今年の暖かさで雪がほとんどなく,1時間以上かけて月山まですべりに来ていたスキー客もいました。さすが夏スキーの王道である月山では,今年の暖かい気候にもかかわらず,雪の量は十分でした。

スキーのお上手な野坂夫人とおじょうさんの足手まといになりながら,私と娘はご一緒に滑らせていただき,自分たちのレベルなりのスキーを楽しむことができました。

でも野坂氏は月山にきても,楽しみ方が凡人とは違います。スキーを履いてはいますが,ほとんど滑らず,約6sのちょっと派手なザック(アップスキー)を背負って,山を見据え,自然と対話しながら,アップスキーに最適な風が吹くのを待っています。アップスキーに関しては皆様HPをご覧いただいてよくご存じかと思いますが,簡単に言いますとスキーを履いて,パラシュートをつけて,風が吹くとあら不思議,リフトも使わず斜面を登ってしまう,なんとも便利で楽しい乗り物のようです(本当はこんな簡単な説明では言い尽くせないらしい)。また野坂氏はとても友好的なお人柄で,自分だけがアップスキーを楽しむだけではなく,ご家族や仲間達にもこのすばらしい乗り物を体験するチャンスを与えようと,ちょうどいい風をただひたすら待っているのであります。アップスキーにちょうどいい風とは5メートル以上の風速だそうです。上級者の方はかなりの強風でも実施可能だそうですが,初心者にとっては10メートル以下の風が適当なようです。

王道の月山とは言っても,風の向きと強さと天候の条件がなかなか合致せず,とうとう最終日になってしまいました。最終日は晴れ,風よし,最後のチャンスです。野坂氏はもくもくと山頂を目指し,野坂夫人と私と子供達も遅れながらついていきました。私達が到着したそのとき,きれいなパラシュートが開いて誰もいないゲレンデを野坂氏がスキーでさかのぼっているではありませんか。

写真や映像で見たことはありましたが,生で見たのは初めてで,あまりの華麗さと優雅さに時間が止まったように感じました。野坂氏はスキーで斜面を下って,パラシュートで滑り上がる(なんと表現したらよいのか分からない)ことをなんどか繰り返し,その後見ている私達に「やってみない?」と声をかけてくださいました。まず娘が野坂氏の腰にしがみついて何度か挑戦しながら,アップスキーらしきものを体験させていただきました。

そのあと,なんと私もハーネスをつけ,野坂氏からレクチャーを受け,アップスキーを体験させていただきました。はじめは訳も分からず野坂氏の言われるままにライザーを少し持ち上げると,パラシュートの中にサーと風が入って,丸いマッシュルームのようなパラシュートがふくらみました。そのとたん腰につけていたハーネスに力が加わり,あっという間に私の重い身体は重力に逆らって山の上まで押し上げられました。なんともいえない浮遊感に思わず「わーい!すっごーい気持ちいい!」と自分自身に叫んでしまいました。その後,野坂氏のご指導の元,4回ほどアップスキーらしきものを体験させていただきました。

感想としては,私のような運動神経がなく,とても重い人間でも気軽に浮遊感と逆Gを体験することができ,目に見えない風を体感することができて,「こんな簡単に,こんな楽しい思いをしちゃって本当にいいの?」って感じです。その後,風がどんどん弱くなり,私の後に準備していた野坂夫人がパラシュートをセットする頃には無風状態になって,飛べなくなってしまいました。

こんなそんなで私のアップスキー初体験は「棚からぼた餅」的に完了しました。でもこんな楽しい思いができたのも,前日に時間をかけてラインチェックなど機体の整備をして下さった野坂氏(および我が家のパパも)や小さな身体でアップスキーをかついで登ったにもかかわらず,私に先を譲ってくださった野坂夫人のお陰です。感謝していまーす(こんどは私が担いで降りるからゆるしてね)。

みなさん,チャンスがあったらぜひアップスキーにチャレンジして下さい。こんなに手軽に自然の中で風を感じながらできるスポーツってそんなにないんじゃないでしょうか。それにめちゃくちゃ人のいいお酒好きなインストラクター付きですよ。こんな素敵な体験をした後に酌み交わすお酒はまた格別ですよね。 ではどこかのゲレンデでお会いできることを楽しみにしています。

 

平成14年5月17日